先日、砂糖を減らしたパン作りをやってみました。
砂糖には保水性があるということはブログ#19でも書いた通りです。
水分を保持しやすくなるので生地がべたつきやすくなる、という側面もありますが、砂糖のおかげでしっとりとしたパンが作れるのですね。
ここで改めて、砂糖の役割を勉強してみました。
参考にしたのは『科学でわかる パンの「なぜ?」』の本です。
砂糖は副材料
パンにおける主材料は以下の4つ。
- 小麦粉
- イースト
- 水
- 塩
これらがあればパンはできるので、実は砂糖は製パンにおいて必須の材料ではないのですね。
レシピによって入れたり入れなかったりする材料を「副材料」といい、砂糖も副材料の1つです。
実際、バゲットなどのハード系パンには砂糖が入っていないですよね。
では、必須ではない砂糖にはどんな役割があるのでしょうか。
砂糖の役割は5つ
砂糖の役割は主に5つあります。
- アルコール発酵の栄養源となる
- パンの焼き色を濃くする
- 香ばしさを与える
- パンをしっとりと柔らかくする
- パンが固くなるのを防ぐ
一つずつ補足していきます。
アルコール発酵の栄養源となる
グラニュー糖や上白糖の98%近くが「ショ糖」で占められています。
この「ショ糖」はブドウ糖と果糖が組み合わさったもので、酵母の中にあるインベルターゼ(インバーターゼ)がショ糖をブドウ糖と果糖に分解します。
ざっくり書くとこんな感じ。
グラニュー糖や上白糖 + 酵母 → 果糖&ブドウ糖
さらに果糖とブドウ糖を酵母内の酵素チマーゼがアルコール発酵に大切な炭酸ガスとアルコールに分解します。
ざっくり書くとこんな感じ。
果糖&ブドウ糖 + 酵母 → 炭酸ガス&アルコール
つまり、砂糖に酵母が出会うことでアルコール発酵が促進されるのですね。
ここでこんな疑問が出てくる人もいるのではないでしょうか。
砂糖って「主材料」じゃないのはなんで?
砂糖がなくても発酵するのはなぜ?
わたしも同じことに気づきました。
そちらについてはまた別のブログで解説します!
パンの焼き色を濃くする&香ばしさを与える
パンがなぜこんがりと良い焼き色で焼けるのか。
その答えも砂糖にあります。
2つのキーとなる言葉が『メイラード反応』と『カラメル化反応』です。
メイラード反応をざっくり書くとこんな感じ。
果糖&ブドウ糖 + たんぱく質&アミノ酸 + 高温 → 焼き色 と 香ばしい香り
前述のとおり、砂糖は酵母のおかげで果糖やブドウ糖に分解されます。
そこに、小麦粉や卵に含まれるたんぱく質やアミノ酸が加わって高温で焼くことで、褐色の色素が構成されてパンの良い香りがするのです。
カラメル化反応をざっくり書くとこんな感じ。
果糖&ブドウ糖&麦芽糖 + 高温 → 焼き色 と 甘いカラメルの香り
こちらはたんぱく質などがなくても反応します。
カラメルと聞いて一番身近なのがプリンのカラメルでしょう。
あのカラメルもとてもシンプルで、砂糖を混ぜた水を鍋で火を通すとやがてカラメルになります。
これがまさにカラメル化反応です。
パッと見た時に食べたくなる色と、パン屋に入ったときに香ってくるあの香ばしい香りは砂糖のおかげだったのですね。
パンをしっとりと柔らかくする
パンの材料をまぜるとき、実は生地の中で水を奪い合っているのです。
グルテンの形成には小麦粉に水は不可欠ですが、砂糖があると本来小麦粉が吸収するはずの水を砂糖が吸収してしまいます。
そのため、グルテンの形成が抑えられて柔らかいパンになるのです。
また、分解された果糖とブドウ糖は保水力が高まります。
ただの水分は焼成で蒸発してしまいますが、糖には保水性があるので水を離さず保持してくれるのです。
結果、焼いた後もしっとりとしたパンになるのですね。
パンが固くなるのを防ぐ
なぜパンが柔らかいかというと、小麦粉に含まれるデンプンが水と熱で糊化(こか、α化)することでふんわりとした構造が作られます。
しかし、焼いた後に冷めてくると徐々に水分がなくなりデンプンの老化(β化)が起こります。
ここで砂糖の出番です。
砂糖は分解されて発酵に使われると書きましたが、入れた砂糖のすべてが発行に使われるわけではありません。
発酵に使われなかったり、ショ糖のまま分解されなかった糖は水を含んでいるので、パンの老化を遅らせることができるのです。
砂糖がたくさん使われている和菓子などが日持ちするのもこれが理由です。
砂糖には、甘くする以外にもとても重要な役割がたくさんあるのですね。
まるパンの目指すパン
まるパンは、地域の子どもたちにおいしいパンを届けたいという思いがあります。
ハード系のパンもおいしいですが、やっぱり子供たちが好きなパンと言えば甘くてふんわりとしたパンではないでしょうか。
だからこそ、砂糖の量や使い方はとても大切だと思っています。
入れすぎても甘くなりすぎるだけだし、焦げやすくもなる。
入れないと甘くならないししっとり柔らかく焼けなくなる。
砂糖の仕組みを理解したうえで良いバランスを見つけることが大切ですね。
今回の「生地ベタベタ問題」を機にとてもいい学びができました。